街路樹

いつもと違う道から帰るのが好きだ
その道にはまだなんの思い出もないから
いつもの道から帰ろうとすれば、
あの子と話した公園も、
初めて食事したファミレスも、
泊まったホテルも視界に入る

 

いつもと違う道を通ると
まだまっさらな街が広がっている
まるで自分の事を誰も知らぬ世界に来たような気持ちになる、少し寂しくもなる
あそこのお洒落なカフェいつか行きたいな
いつか、誰かとの思い出でこの道も色づくのだろうか
あの子と一緒に歩けたらな
、、またいらないことを考えてしまう

 

あっ、この景色、この道と繋がってたのか
なんだ、もう終わりか
過去から逃げることはできない
知らない道だって必ず思い出と繋がっている
諦めて家に帰る、生きるって辛いな

 

あの子と歩いた道を一人で踏みしめる
すべての思い出と繋がった未来を、
あともう一歩だけ踏みしめる
あ、カレー屋さんが新しくできてる
私の気づかぬうちにこの街も少しずつ変わっているようだ
時間の流れに遅れないように、焦らないように、私は足元を確かめた


f:id:yukio_drug:20210805011437j:image